1972年、当時私は信濃大町で仕事をしていた。その折大スターの越路さんと、二日連続でgolfをした。コーチャンの愛称で人気絶頂の頃だった。
ご主人の作曲家内藤法美さんと3人でラウンドした。
1日目の帰りがけに、越路さんがお願いがあるという。「美味しいスイカを食べたい、内藤はスイカの選び方を知らないので、教えてほしい」とのこと。私も選び方をよく知らないが地元上原のスイカが美味いので購入し、お二人の夏を過ごす別荘まで届け、悦ばれた思い出がある。
その際、エンターティナーで知られた越路さんの一面を二日間垣間見た。
内藤さんは物静かで優しい人で、越路さんの侍従のようにも見えた。
コーチャンも丁寧に内藤さんと会話されていた。まさにお互いに愛しあい、信じあっているように見えた。
あれから40年経った今、お二人ともこの世にはいない。先日TBSTVで、日生劇場で当時行われた越路吹雪コンサートの2時間録画を観た. GOLF場でみた越路さんとは別人に感じる舞台上の,色香漂うコーチャンであった。
メモリアルとして購入したLPは、懐かしい我が人生の想い出の一つである。
曲題(越路吹雪のすべて)
「:愛の讃歌」 「ラストダンスは私に」 「恋ごころ」「別れ」[夢の中に君がいる」「サントワマミ」「想い出のソレンツァラ」「チャンスが欲しいの」「メランコリ」
すべて岩谷時子訳詩、内藤法美編曲だ。越路さんと岩谷は気があっており、この3人のコンビが数々の名曲を創り出した。岩谷時子の訳詩は、日本人の恋を激しく、優しく表現する。
最大のヒット曲「愛の讃歌」の詩は、
<あなたの燃える手で 私を抱き締めて ただ二人だけで 生きていたいの ただ命のかぎり
私は愛したい 生命のかぎりに あなたを愛するの 頬と頬よせ 燃えた接吻交わす歓び
あなたと二人で暮らせるものならなんにもいらない あなたと二人生きて行くのよ>
である。越路さんを音痴という人もいるようだが、愛を伝える声は、強く強く飛び込んでくる。とても
彼女ほど愛を伝えられる人はいない。そして発声が上手い、独特な味がする。恐らくこんな表現で唄える人は、ちあきなおみぐらいかと思う。
私は、ネオロマン派と自称しているが(理性に乏しく情緒に弱い)、書店に溢れる恋愛本は、愛を「愛すること」でなくて「愛されること」と勘違いしていると思う。だから私はFALL IN LOVEなる表現は好きでない。
エーリッヒ・フロムは「愛するということ」の著で<瞬間的に燃え上がった恋は、最初はお互いに夢中になっていても、やがては興奮からさめてしまう。永続的にとどまっている状態こそが本当の愛である。」といっている。私は愛は意識して生まれるものではなく、無意識に気づくものと思い、本性の命じるままに生きて来たが、人を愛することとは愛する人の全人格を信じ,認め、愛する人の行動はすべて受け入れられる状態をいうのだと思っている。愛とは絶対的愛であり、相対的(条件的)な愛は愛ではないと思っている。 小倉遊亀作「こうちゃんの休日」
越路さんの熱唱の数々を聴くと、愛することの強さを考えずにはいられない。
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