2015年1月28日水曜日

新日本フィルハーモニー公開リハーサルを聴く

すみだトリフォニーホール    2015.1.28

指揮者:井上道義


演題:武満徹作曲  「地平線のドーリア」

    
   吉松隆作曲  トロンボーン協奏曲
             「オリオン・マシーン」

  トロンボーン奏者:箱山秀樹



サントリーホールでの公演を翌日にひかえた最後の演奏リハーサルだった。喉頭がんから回復した井上が、元気な様子で独特の指揮ぶりをみせた。

武満の「地平線のドーリア」は、ドーリア旋法をとりいれた1966年の初演である。
17弦楽器群のための作品で、8人の弦楽器奏者の後方にそのエコーを奏する9人の弦楽奏者が並び、17人の編成だ。此の編成から旋律に代わって,音色の動きによる人間の生きる脈拍が聴こえて来る、驚いた。
東洋的な繊細さがあり、ときにはげしく、そして不思議な世界が展開される。

武満はいう。

「私は音楽と自然のかかわりについて、いつも考えているが、それは自然の風景を描写することではない。私は時として人間のいない自然風景に深く打たれるし、それが音楽をする契機ともなる。私は自然と人間を相対するものとしては考えられない。私は生きることことに自然な自然さというものを尊びたい。」(音、自然と測りあえるほどに)より引用

私は、「地平線のドーリア」の奏でる不思議な音色の根源は、この武満の思考から生み出されていると思う。音に混ざり、聴こえて来るハープの音の純粋な静寂さに、東洋の美学と清楚な宇宙を思った。ハープの音をこれほど美しいと思ったことは無い。武満の音楽だけがもつ世界だ。リルケが世界的内部空間とよんだ不可視の空間だと思う。

吉松隆作曲の「トロンボーン協奏曲」オリオン・マシーンは、箱山氏のために書いた曲で1993年の作。冬の星座オリオン座を囲んでピアノ、ハープ、打楽器をオリオン座の3星に見立てし、オーケストラがそれを囲むという想定である。

箱山さんのトロンボーンは、奏法技法の曲を極めて、弱音など美しく奏で、こんな音が出るのかと思うくらい多岐に変化する。
私は、生涯はじめてトロンボーン協奏曲なるものを聴いた。かなりJAZZ的な曲だが、のりがよくて楽しんだ。


作曲者の吉松氏が客席で楽譜を見ながら聴いていたが、演奏後、指揮者と箱山氏に楽譜と演奏との違いを5^6か所指摘され、それにしたがって再演奏された。


聴きがいのある2時間半であった。




               


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