2014年12月17日水曜日

N饗定期演奏会(1798回)を聴く

2014.12.17  サントリーホール

演題

ドヴュッシー(ラヴェル)/「ピアノのために」から「サラバンド」

ドヴュッシー(ラヴェル)/舞曲

ファリャ/交響的印象「スペインの庭の夜」

ラヴェル/ピアノ協奏曲ト長調

ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)

指揮:シャルル・デュトワ

ピアノ:ユジャ・ワン 


  

指揮者シャルル・デュトワは、モントリオール交響楽団を色彩感豊かな管弦楽団に仕上げ、以来フランス音楽の指揮者としての世界の地位を確立した.
今年78歳のデュトワは1974年妻アルゲリッチとの日本公演直前に大喧嘩し、アルゲリッチが日本から突然帰国し、公演は中止となり話題を呼んだ。感情の激しいアルゲリッチと、プレイボーイのデュトワの日本での私生活上のロストロマンを思い出した。
野暮な話はそれまでにして、二人はその後苦い思い出の残る日本で、デュトワは1998年から16年にわたりN響に美しい弦の響きを植え付けたし、アルゲリッチは、日本好きとなり、現在も別府音楽祭を主宰して日本の音楽界に寄与している。

私は近年、音楽会の演奏から「何かを聞き出そう」という努力よりは、「何が聴こえて来るのだろう」とあるがままに聴き入る楽しみを愛する自分を感じるようになった。あたかも人がぶらり一人旅に出る心境に似ている。たとえそれが死への感覚に終わろうと自然に還る楽しみは実感できるのだ。

さて今回のプログラムはデュトワの最も得意とするドヴィッシ―、ラヴェル、ファリアから、音楽愛好者に親しまれている曲を盛り込み、更に1984年モントリオール響と名演したストラヴィンスキーの「火の鳥」を織り込んだ実に楽しい夜となった。

何が聴こえて来たか?

荘重でゆったりとした優雅さをもって始まる「サラバンド」は、不思議なフランス的色彩感に溢れていた。冒頭の終わりと、曲の最後に2回くりかえさせるタムタムの余韻が素晴らしい。注。タムタムは低い音が出る銅鑼)

「スペインの庭の夜」はピアノと管弦楽の組み合わせなのだが、ピアノ協奏曲の形式にとらわれずファリャは交響的印象としてスペインの実際の3っの庭を音風景で表したものだ。私はこの曲をクララ・ハスキルのピアノの録音盤で聴いていて、曲の醸し出す異国情緒が好きだった。
ピアニスト「ユジャ・ワン」は27歳でまだあどけなさが残る北京生まれ、2011年カーネギーホールのリサイタル・デビュ―を果たしている。リストの柔らかな動きや、指つかいには、一種の安定感があった。

ラヴェルのピアノ協奏曲は、初めて聴いた。1928年北米演奏旅行にでかけ、その際ガーシュウィンに出会いJAZZの書法に曳かれた。母の想い出につながるスペインの想い出とミックスされ主題が味わい深い。「協奏曲は陽気で華麗なもの」というラヴェルの考えが溢れていて、JAZZピアノを聴くような錯覚さえあった。偶々YOU  TUBEで1990年、デュトワ指揮、ピアノ;アルゲリッチ,フランクフルト交響楽団演奏の旧夫婦だった「ラヴェル;ピアノ協奏曲ト長調」があり聴いた。今回の演奏とかなり違って聴こえた。

「デュトワの夜」となづけられる演奏会であった。外は寒冷前線におわれた「寒い夜」だった。


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