2014年9月19日金曜日

「アルゲリッチ私こそ、音楽」の映画を見て


アバトと。
鬼気迫るピアノ演奏をするマルタ・アルゲリッチの真髄を、なんと映画という媒介で見た。実の娘の監督による音楽ドキュメントだ。
BUNKAMURAル・シネマで全国ロードシヨーに先駆けての公開を駆けつけて見た。

恋多き彼女の、壮絶な人生と苦悩を、この映画は浮き彫りにしてくれる。
私は、次元の違う彼女の演奏が好きであった。彼女の演奏には音楽の範疇を超えた生の人間が存在すると思う。

彼女は英才教育をウィーンで受けた。コンクール受賞暦はショパン・コンクール優勝ほか多くて列挙できない。1998年から別府アルゲリッチ音楽祭を開催している。
今年74歳だが、3度の結婚と離婚を繰り返し、3人の娘をもった。因みにN響の指揮者を務めたシャルル・ディトワは、2番目の夫である。その他噂の種となった男性は多いようだ。

映画は、実の娘:ステファニー・アルゲリッチ監督によるもので、アルゲリッチ自身が主演という他に例を見ないものだ
映画のなかで、多くの曲を聴かせるが、その激しいダイナミックに驚く。そして肉感的な旋律!
この映画では、過去のの名演から、ベートーヴェン、ショパン、モーツァルト、シューマン、ラヴェルを聴かせる。加えて演奏前のイライラ状態から、弾き終わった瞬間に生まれ出る快感を娘が撮影し、映し出す。「音楽との関係は、葛藤の連続、それは
愛と同じ」という。
また一番感情的に同化できるのは、シューマンだという。


私は1980年代のCDを6枚持っていて聞いてきた。
実演奏はスイス・ロマンド管弦楽団との共演で1987年に聴いている。ラヴェルの「スペイン狂詩曲」、「ラ・ヴァルス」、「ボレロ」そして、モーツァルトの「ピアノ協奏曲第17番」だ。
<彼女の荒れ狂う絶叫の音色、音量、ツヤのある演奏に驚いた>と拙著[その1](97ページ)で書いている。

音楽そのものを人生として生きて、自己流に生きているアルゲリッチ。彼女は肉体の中に自分の音楽をもっているのだ。この人は老いて益々美しい。


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