2014年12月1日月曜日

ヴェルディ「レクイエム」演奏会

2014.11.30   藤沢市民会館大ホール





ヴェルディ
演題:ヴェルディ「レクイエム」
    Ⅰ。レクイエムとキリエ
    Ⅱ。怒りの日
    Ⅲ。奉献唱
    Ⅳ。聖なるかな
    Ⅴ。神の子羊
    Ⅵ。絶えざる光を
    Ⅶ。我を救い給え

出演:ソプラノ;菅英三子
    バリトン;福島明也
    メゾソプラノ;栗林朋子
    テノール;福井敬

指揮:小田野宏之

合唱:藤沢市合唱連盟
                                        
管弦楽:藤沢市民交響楽団


[レクイエム」は、死去した人を記念し、来生での幸福を執り成すために唄われる「死者のためのミサ曲」である。

ヴェルディのレクイエムは、モーツァルトの[レクイエム]、フォーレの[レクイエム]と並んで3大レクイエムとして親しまれているが、イタリア歌劇で名をなしたヴェルディらしく、もっともオペラチックな「レクイム」である。
フォーレの<黙想的で慰めに満ちた曲>、モーツァルトの<悲劇的な祈りの曲>と比較したとき、宗教的な色彩が少ないといえる。

藤沢市民交響楽団は、創立55周年を迎え、団員も100名をこえた。故福永陽一郎による指導で
藤沢市民の文化を育ててきた。全国的にも珍しい3年毎の市民オペラ上演で知られる。
ソリストにはプロを招き、ほかは自前で上演する。1800の客席は常に満員である。

さて、演奏が終わって思ったことは、一時間40分に及ぶ大曲を弾き終わった管弦演奏者と、唄い終わった歌い手の人達の達成感の大きさである。

夫々家庭人や、仕事に追われる人々であろう。寸暇を惜しんでの練習であったろう。
オーケストラは若手中心で、歌手には中高年が多いように見えた。中には足を引き摺り乍ら段にあがる老齢者もいた。
音楽を生業としない人達のなかで創造された音楽は、それなりに意味のあるものだと思う。藤沢市は文化都市である。そんな事を想起しながら拍手を贈った。

私はかってパリの聖オーガスト教会と、アッシジの聖堂でレクイエムを聴いた。地元の信者が主体の「モーツァルト・レクイエム」であったが信者の信仰にあふれた感動的な音楽が流れた。両者を比べるのは不当であるが、彼我の差を感じた。

翌日,ゲルギエフ指揮のサンクトぺテルスブルグ歌劇場管弦楽団と合唱団による「レクイエム」で聴いてみた。ソプラノ役はメトロポリタン歌劇の女王ルネ・フレミングだ。
(この指揮者によるヴェウディの「運命の力」は素晴らしい。私は拙著「私のクラシック音楽の旅」そのⅠで記したが、このオペラを最上と思っている。)

冒頭の静かな永遠の安息を願う祈り、主題の旋律が美しい。口ずさみたくなる仄かな調べだ。
そして、「怒りの日」で爆発する大音響!独唱者たちはオペラの登場人物のように自分の感情を述べる。最終楽章「我を救い給え」まで爆音が続いて終わる。

率直さ、暖かい人間性をもつヴェルディの特質に、オペラ「運命の力」を思い出させた市民による「レクイエム」であった。


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